「日本電産永守イズムの挑戦」を読んでみた

日本電産永守イズムの挑戦」を読んでみた。

日本電産永守イズムの挑戦

この本は一代で年商6000億円の企業を築いた日本電産の創業社長永守重信の個人史と、三協精機製作所の再建までのドキュメンタリで追った本。

日本電産に関しては、B2Bでやってる会社だから名前も知らなかった。ちょっと前に見たカンブリア宮殿に社長の永守さんが出演されていて、とてもおもしろい方だなぁと興味を持ったのでこの本を手に取ってみた。

色々と永守さんのすごいエピソードが出てくるんだけど、この人、高校生の時に塾を開業して地元の中学生を集めてかなりの実績を上げてたらしい。それで当時の大卒の初任給ほどの収入を得てたとか。しかもさらにその資金を元手に株式投資を始めてさらに一山儲けたらしい。授業中もずっとラジオを聞いて株価の変動を追ってたって…。

永守さんはM&Aのプロと呼ばれるだけあって企業、人を見る目がずば抜けている。
例えば、かつて日本電産の入社試験で早飯試験を実施したという。どういう試験かというと、受験者に「試験の前にまずゆっくり昼ご飯を食べてください。」と伝え、その中で15分以内で食べ終わった人を採用するというもの。これは義父から聞いた「戦時中に活躍したのは早飯、早風呂だったやつだ」という言葉が発想の元になっている。
後にこれについて講演で次のように述べている。

「早食いで入社した社員が東京大学から博士号をもらい、特許も200件持っているなど、世界に冠たる開発をしています。今でも五年たってから新入社員の成績表を開けてみると、会社に入ってからの実力と学校の成績がいかに関係ないかが分かります。」

その他にも人間の本質的な能力を指摘する発言をされています。

「人間の能力の差は5倍しかない。人間の知能とか経験とか知識なんて物は、そこそこの会社の社員であれば5倍もないのです。(中略)しかし意識には100倍の差がある。実際は100倍以上ですな、おそらく。従って頭のいい人を取るよりも、意識の高い人をとった方がうんと会社がよくなります。」

結果はその人の能力よりも意識の方に付随する、ということだと思う。もちろん永守さん自信の意識はとても高く、2010年に日本電産の売上高1兆円を掲げ、達成間近。さらに2030年には10兆円を達成することを公言されている。それについても本書の中で語っている。

「夢を形にするのが経営ですが、その夢の前にホラ。それも大ボラ、中ボラ、小ボラと変化して夢に辿り着く。夢まで来れば現実化するのは時間の問題です。ただ、2030年の売上高10兆円は現在のところ大ボラそのものですが…。」

どんな大きなこともまず口にすることから始まるということで、それを実現する為には徐々にその解像度を上げて行かなくてはいけないということだと思う。

このように永守さんの言葉はとにかく強く、色々と考えさせられる。
個人的な話だけど、最近少人数ながら人を束ねて活動をする機会があって色々と悩みが溜まってきているんだけど、この本を読んでわずかながら前向きに考えられるようになってきた。人を動かす時はもっと長期的な視点で考えなければいけないんだなぁと反省した。

後は文中で気になった発言。

「技術がしっかりしていることは競争力に繋がっていきますけど、儲かることには直接つながらないのです。」

「1日24時間という時間は誰にでも平等に与えられている。しかし、この24時間をどう使うかはそれぞれの勝手だ。」

「上へ行けば行くほど景色はよくなっていく。会社も同じで、ある一定規模に持っていかないと、景色は変わらないのです。下から見ていて、『あの会社を買う』といっても失敗しやすい。でも、高いところから見ていたら失敗しないものです。だから、規模を追求する。」

「仕事を任せるということは、常に進捗の状況と内容のチェックが行われていなければならない。それがなければ放置である。」

「その人にどれだけ能力があるかという前に、どれだけ信頼できるかということを優先する。いくら有能であっても、人を裏切り、苦しみをともに分かち合うことの出来ない人には仕事を任せられない。信頼の基本は『ごまかさない』『にげない』『やめない』の3つにあると思う。」

「チャレンジのないところから決して成功は生まれない。何もしない者より、何かをしようとした者を応援する。」

「人に信頼を得ようとすれば、人に不安を与えぬようにしなければならない。そのためには進んで状況を知らせることであり、正しく報告をすることである。」

「人より頭が悪いと思っている人は、時間でこれを補えばよい。うさぎでない人は、カメであれ。」

「目の前に落ちている小さな部品を見つけてサッと拾おうとするか、見過ごしてしまうか、はたまた安い部品だからと踏みつけてしまうか。ちょっとした違いが各人の仕事の成果を、さらにいうならば、組織の明暗を大きく分けることになる。」